歩くことで病気を防ぎ生涯健康であるために4

第4章 健康長寿を目指して1歩踏み出すために

1) 転ばぬ先の杖

実際に中強度のウォーキングを実践されている方の声に興味を持たれた方も多いのではないでしょうか。そのくらいならできるという方も大勢いらっしゃると思いますが、それでも自信がないという方もいるでしょう。自分に合った中強度の歩き方と言われても、すでに杖に頼って歩いている方や腰の曲がっている方にとっては、家の中での移動も苦労されていることでしょう。

そこで、そんな方におすすめしたいのがポールを使ってのウォーキングです。つまり、転ばぬ先の杖ということになります。

ポールを使うことでバランスがとりやすくなり、しかもポールを手にすれば上半身も動かすことができます。歩行が安定して上半身の動きも加わることで、中強度の歩行に自信のなかった方もエネルギー消費量が増えて中強度の運動になると思います。

そして、どんな方でも年齢とともに筋力が衰えて歩き方に変化が生じてきます。歩幅が狭くなり横断歩道を渡り切らないうちに信号が赤になってしまうとか、まっすぐ立っているつもりでもわずかに前かがみになっていることはよくあることです。

ただ、その原因は筋肉の衰えだけでなく脳機能の低下も影響しています。たとえば、睡眠障害が脳の働きを鈍くするように、不眠からうつ病や認知症などに進むこともありますので、良い睡眠をとるためにも中強度のウォーキングを実践して前向きな気持ちで生活できるようにしたいものです。

2) 中強度のウォーキングを続けるコツ

実は、中強度のウォーキングを続けるには、ぜひ知っていただきたいコツがいくつかあります。それは改まった姿で気負いこんで必死になって1日8,000歩・速歩き20分を目指すのではなく、無理なく負担なく1日8,000歩・速歩き20分を実践できるコツをつかむというものです。

まず一つ目のコツは、毎日きっちり8,000歩という歩数にこだわる必要はありません。たとえば、1週間単位で平均1日8,000歩を目標にすれば、意外に達成しやすいのではないでしょうか。天気の悪い日や寒い日は歩く歩数も少なくなるかもしれませんし、仕事をされていれば休日は多めに歩くことができるでしょう。そういった多少の歩ける歩数の違いを考慮して、1週間単位で平均8,000歩を目指してもいいと思います。

ただし、歩いてみるとわかることですが、極端な歩数の差はカバーできるものではなく、昨日はまったく歩けなかったので今日は2日分の16000歩というわけにはいかないはずです。基本は、毎日ほぼ同じ歩数がおすすめです。また、歩く場所も必ずしもウォーキングに相応しい場所でなくてもいいと思います。ショッピングモールや地下街など雨の日でも歩ける場所を見つけてもいいでしょう。まずは歩数を重視してウォーキングを始めていただき、歩ける量が安定してきたら中強度を意識して歩くようにしていきましょう。

次に目標値を作ることも、ウォーキングを続けるコツの1つです。たとえ1日8,000歩・速歩き20分を最初の目標に掲げたとしても、すぐに自分には無理だと感じる方もいるはずです。それでも、無理をして1日8,000歩・速歩き20分にこだわっていたのでは、ウォーキングそのものに嫌気がさしてくるかもしれません。

それよりも目標を下げて7000歩・速歩き15分を日常化できれば、がんや動脈硬化、骨粗しょう症の予防になります。それでも困難であれば、5000歩・速歩き7分でも構いません。毎日5000歩・速歩き7分続けることで、脳卒中や心疾患などの病気を発症することが少なくなると言われていますし、認知症の発症率もかなり低くなるようです。もちろん、5000歩・速歩き7分が難しいようであれば、2000歩歩いて座りすぎを防ぐだけで寝たきりになる確率を下げることができます。

さらに、ウォーキングを続けるコツとして自分の状態を知ることが大切であり、そのためにウォーキングの記録を付けることをおすすめします。特に、活動量計を利用することをおすすめしたいわけですが、活動量計は加速度センサーが内蔵されているため歩数だけでなく身体活動の強度を計測することができます。

初期設定で体重や身長、性別や年齢などの情報とともに中強度判定メッツ値を入力して使うことができます。おそらく1週間ほど活動量計を身に付けていれば、自分の生活がわかってくるはずです。そして、活動量計で得た記録から自分の24時間の歩数と中強度活動時間の平均値を出すことで、意外に歩いているとか、引きこもりがちといった生活の様子に気付くでしょう。

また、掃除機をかけている時は何メッツで風呂掃除は何メッツかということもわかり、特別にウォーキングの時間を設けなくても、意識せずに日常生活の中で歩いていることがわかる場合もあるでしょう。

問題は、中強度が足りないとわかった時かもしれません。そんな時はどんな工夫をすれば歩数や中強度を補うことができるのか、そのコツは日常生活の中に見つけることができるはずです。たとえば、エレベーターを使わずに階段を利用してみてはいかがでしょうか。いつも利用している駅の一つ前で降りて歩いてはいかがでしょうか。2階の寝室で寝起きしていても、夜中のトイレは1階まで下りることにしているという方もいます。

不便だと感じることが、逆に言えば運動量を増やすことになるわけです。活動量計はそんな活動量の不足や中強度の歩行ができているかなどを客観的に教えてくれます。

3) 自治体や企業の取り組み

最後に、実際に中強度のウォーキングを実践している自治体や企業の例をご紹介したいと思います。まずは、2012頃から地域の方たちに活動量計を付けていただいて、生活指導を試みているのが長野県駒ケ根市です。駒ケ根市では医療機関とタイアップして、「健康ステーション」という施設を作り自分の活動量計をかざして健康状態を知ることができます。スタート当時は10施設ほどの医療機関で対応していたようですが、2017年8月には31施設まで増えています。

駒ケ根市では80歳から介護保険の申請が増えることから、介護予防の対象者を75歳から79歳の方とし、「健康ステーション」を訪れることが介護予防につながる仕組みを作られたようです。また、病気の予防ラインとして1日20分歩くことを習慣付けることも推奨しているそうです。そういった取り組みの結果、駒ケ根市では高血圧や脂質異常、糖尿病の検査値が改善したり、安定して悪化していないなどの効果が出ている方も多いようです。

ただし、やはり中強度の判断が難しいと思う方もいらっしゃるようですが、「健康ステーション」を訪れることで個人データーが作られアドバイスが受けられることが続ける意欲につながっているのでしょう。

また、活動量計を付けての取り組みは群馬県中条町でも行われています。中条町での取り組みは2000年から始まったわけですが、活動量計を付けて日常行動パターンを測定し、健康長寿に生かしています。そして、町内34ヶ所に「健康づくりサロン」という拠点を設けて、住民の方たちの健康相談の場としてご利用いただいているようです。

さらに奈良県での取り組みは「おでかけ健康法」というもので、2022年までに全国1位の健康長寿を目指すという目標を掲げて行っているそうです。実は、奈良県は専業主婦率が全国1位ということで、その影響からか男性の健康寿命が全国13位なのに対して、女性は41位ということです。

そこで女性が外に出る機会を増やすために、買い物のついでに立ち寄りやすい場所に「健康ステーション」を設置し、体脂肪率や筋肉量、血圧などを測定して指導を受けられる機会を持っていただけるような取り組みを行っています。

その他にも神戸市では働く世代を対象に質のいい歩きを競うようなイベントを行い、横浜市では歩数計を無料配布して歩数に応じてポイントがたまるといった仕組みで市民の方のやる気を促進しているそうです。さらに、静岡がんセンターでは患者さんの運動療法として活用し、活動量計を配布して従業員の健康管理を続けている企業もあります。

健康で長生きするために運動をしなければと思っても、なかなか1人では始めにくいのかもしれませんが、家族や職場、あるいは地域で取り組むことで1歩踏み出せるのではないでしょうか。

 

参考文献:「あらゆる病気は歩くだけで治る!」医学博士 青柳 幸利 著

参考文献著者紹介


医学博士 青柳 幸利氏
東京都健康長寿医療センター研究所
老化制御研究チーム副部長、運動科学研究室長

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