歩くことで病気を防ぎ生涯健康であるために1

第1章 これまでの歩き方の常識が変わる

1) 間違った歩き方が健康を害する

「長生きするために1日1万歩を目指して歩こう」そう思って、万歩計を付けて毎日必死になって歩いている方も多いのではないでしょうか。ところが、目標の歩数さえこなしていれば健康が維持できるとは限らず、逆にさまざま不具合が出てくることもあります。たとえば、1日中歩き回ることの多い旅館の女将さんともなれば、その歩数は1万歩どころかそれ以上になることもあり、足腰は鍛えられているはずなのですが、ある日転んで足を骨折された女将さんがいます。

実は、骨粗しょう症だったことも骨折の引き金になったようですが、たとえ歩数は1万歩を超えるほどであったとしても、着物を着て旅館の中をすり足で歩くことや、ほとんど建物の中を歩いているために日光を浴びることが少ないことなどが影響して、骨が弱くなっていたのでしょう。また、ハードなトレーニングを行っているアスリートは健康的に思われがちですが、過度な運動は免疫力の低下を招くことがあり、運動のしすぎが健康を害することもあります。

では、フィットネスジムなどに通い健康維持に励んでいる方は、本当に健康を実感しているのでしょうか。フィットネスジムでたっぷり1時間汗を流して運動しても、案外そのあとは疲れて動けなくなることもあるのではないでしょうか。また、毎日ランニングで通勤した結果、膝や足首を痛めたことはないでしょうか。健康のために運動に力を入れていても、結局故障を起こしてしまっては意味がありません。

それよりも、日常生活の中で適度に身体を動かし、適度な歩行運動を行うほうが効率もよく健康維持に適していると言えるでしょう。元々、1日1万歩は生活習慣病を予防するために300キロカロリーの消費を目指して掲げたもので、体重の個人差を考えれば不確実なものです。それよりも、一生涯を健康に過ごせるように、無理のない歩き方に切り替えていただければと思います。

2) 長生きするための歩き方とは

では、どんな歩き方が健康長寿に適しているのでしょうか。実は、ある研究の検証結果から、歩数だけでなく歩き方の質が重要であることがわかりました。それは、17年間にわたり群馬県吾妻郡中之条町に住む65歳以上の5,000人の方にモニターとなっていただき、生活データーを収集し分析した結果からわかった結論です。ずばり1日の歩数は8,000歩。そして、そのうち速歩きを20分取り入れるという歩き方です。

速歩きは中強度の運動と言えるもので、実際に5,000人のモニターの方には身体活動計を身に付けていただき、1日の活動の強度と時間を計測させていただきました。その結果導き出されたのが、1日8,000・速歩き20分の生活をされている方は、高血圧症や糖尿病になりにくく脂質異常症の発症率も下がるということです。

また、1日4,000歩程度歩く方は、速歩きを5分行うことでうつ病を予防することができます。結局、健康長寿を目的に歩くのであれば、量よりも質を重んじるべきだということです。ただ、歩きさえすれば健康が維持できるわけではなく、運動強度を意識した歩き方を実践する必要があります。おそらく何が何でも1万歩を歩こうとすれば、膝が多少痛んでも我慢して歩いてしまうでしょうし、ハードな運動をすればより効果があると思ってしまいがちですが、年齢とともに体力は衰え無理をすれば動脈硬化を起こす危険もありますので、ほどほどの歩行を目標にしていただければと思います。

この中之条町で行った研究は、世界各国の注目を集めました。そして、中之条町にお住いの方だけでなく東京都内に住んでいても、あるいは日本以外の地域に住んでいても、1日8,000歩・速歩き20分は共通の指標となるはずです。そして、さまざまな病気の予防として、あるいは検診で要注意となった場合の対策として、歩く目安を決めていただければと思います。たとえば、寝たきり予防には2,000歩・0分、うつ病や睡眠障害を予防するのであれば4,000歩・5分の速歩きを目安にしてください。

脳卒中や心疾患や認知症を予防し、要支援や要介護にならないためには5,000歩・速歩き7.5分が適しています。がんや動脈硬化や骨粗しょう症予防には7,000歩・15分、そして高血圧や糖尿病には1日8,000歩・速歩き20分といった具合に理想とする歩数と速歩きの時間を目安にしていただければと思います。特に、旅館の女将さんのようにしっかり歩けていると思ってしまいがちな職業の方は、意識して中強度の歩き方を増やしていただきたいものです。

3) 中強度の歩き方を実践するには

特に、中強度の運動が不足している方に用心していただきたいのが高血圧の危険です。高血圧は前述の通り、8,000歩・速歩き20分が予防ラインと思っていただければいいのですが、職業柄8,000歩どころか毎日1万歩以上歩いていても、その中で速歩きを実行するのが難しい場合もあります。1万歩を歩いた後にさらに速歩き20分は体力の消耗を考えるとかなり厳しいでしょうし、そうかと言って1日の歩数を1万歩から8,000歩に減らすのも難しいことでしょう。

ただ、仕事を終えた後、数分間中強度の歩き方を意識していただくことで、血液の循環が改善して高血圧の予防・改善につながると思います。たとえば仕事を終えて駅まで歩く時や電車を降りて自宅まで歩く時など、わずかな時間でも意識して速歩きを実践してください。

また、人は特別なことがない限り、毎日ほぼ同じような歩数で生活しているものです。つまり日常生活の中でその人にとって基準となっている歩数があるわけで、その歩行の中で中強度の歩き方を意識することも大切です。

ただし、1つだけ気を付けたいのは、現在座りすぎが懸念される方たちです。たとえ、歩数を増やさずに中強度の歩き方を意識するとは言っても、1日の大半を座ったまま過ごしている場合は、足の筋肉も衰え身体の代謝機能が低下して血流も悪化してしまいます。そして座りすぎが招く疾患としては、狭心症や脳梗塞、糖尿病やがんの発生率も高くなります。

逆に、立ちっぱなしで作業をされている方の場合も、身体への負担は大きくなり高血圧になりやすいと言われています。1日のほとんどを座って過ごしていれば、当然1日の歩数は少ないでしょうし、2,000歩未満しか歩かないのであれば速歩きを意識して歩くことなど難しいわけです。まずは、できるだけ外に出てきれいな空気を吸って腕を大きく振って中強度の歩きを意識してみてください。

また、1日8,000歩・速歩き20分はあくまでも目安であって、日によっては天気が悪く体調が悪いなど歩けない日もあるでしょうし、逆に容易に8,000歩を超えて歩ける時もあるでしょう。そこで、もう一つの目安として、1週間を区切りに平均して1日8,000歩・速歩き20分を目安にしていただければと思います。運動が長続きしないという方の場合、1日さぼっただけでもう無理だと思い込んでしまい続かないケースもあるようですが、1週間の平均でいいとなれば続けられるのではないでしょうか。

ただし、メタボリック症候群の疑いがあるような方の場合は、ちょっと違います。メタボリック症候群は、高血圧や高血糖といった症状が出ていることが多いわけですが、何よりまず肥満を改善する必要があります。つまり高血圧予防には1日8,000歩・速歩き20分とは言っても、肥満の場合はさらに運動量を増やす必要があり、まずは1日1万歩・速歩き30分を2ヶ月以上続けることをおすすめいたします。もちろん、それでも痩せない方であれば、食事による摂取カロリーと運動によるエネルギーの消費のバランスを意識することも大切です。

そして、肥満の場合は中強度の運動を連続して行うことで体温が上がり、脂肪燃焼効果も大きくなるでしょう。逆に言えば、肥満解消を目的にするのでなければ、速歩き20分は連続で行わなくても効果があると言えます。まずは、毎日続けて1日8,000歩・速歩き20分を目安に始めてはいかがでしょうか。

参考文献:「あらゆる病気は歩くだけで治る!」医学博士 青柳 幸利 著

第2章 中強度歩行を始める前に >

参考文献著者紹介


医学博士 青柳 幸利氏
東京都健康長寿医療センター研究所
老化制御研究チーム副部長、運動科学研究室長

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