座りすぎをやめて健康寿命をのばそう!-1-

第1章 座りすぎが招くリスク

1) 立って作業する試み

面白い実験をご紹介したいと思います。
それは早稲田大学所沢キャンパスの私の研究室で行われている実験です。どんな実験かと言えば、研究室で作業する学生たちのほとんどが、立った状態で作業を行うというものです。机に工夫を凝らし、パソコンを置く台にも工夫を凝らして、立った状態で本や資料を読み、パソコン操作も立ったまま行うことができます。

椅子もバランスチェアを用いているので、座っている時もある程度の筋肉を使って姿勢を維持しなければなりません。バランスが崩れれば立ち上がらなければなりませんが、逆に言えば立ち上がりやすいとも言えます。

おそらく、企業のデスクワークにしても大学の研究室にしても、作業は座った状態で行うのが当たり前で、1日かなりの時間を座ったまま過ごすことになってしまうでしょう。ただ、座ったまま作業を行っているとだんだん姿勢も悪くなり、休憩のために立ち上がった時の身体の解放感はとても気持ちのいいものです。

それならば、簡単に立ち上がれるような工夫をしてみたらどうか。一層のこと、立って作業するほうがメリットも多いのではないか。
そういった考えのもと、さまざまな試みを行っているわけですが、学生の間では立って作業するほうが快適だという意見が出て、この試みも好評です。

さらに、研究室内の試みとしてだけでなく、「座位行動研究プロジェクト」を立ち上げ、他の大学や医療機関、さらに海外の研究機関とネットワークを組み活動を行っています。その活動の中で注目しているのが、座る時間と長寿の関係です。つまり、座る時間が長くなると健康寿命が短くなるのではないかという調査を行っているわけですが、まだまだ座りすぎにどんなリスクが伴うかの情報は乏しい状況です。さらに、座りすぎによる弊害など、危機感を持たれている方は少ないと言わざるを得ません。

ただ、危機感に気付いていないとしても、身体は座りすぎから解放されたいと思っているのではないでしょうか。たとえば、講演会の休憩時間になると、大勢の方が席を離れて廊下などで立ったまま数分間過ごしている光景は、その現れと言えるでしょう。そして、座りすぎと健康長寿についての講演を聞いていただいた方は反応も早く、座りすぎに危機感を持っていただけているようです。

2) 座りすぎに関する調査結果

そういった活動の甲斐もあって、ようやく座りすぎに対する関心が高まってきているようです。いくつかのテレビ番組でも発信させていただき、座りすぎのリスクに驚いたとか、座りすぎをやめるにはどうしたらいいか、といった声が寄せられることもあります。

もちろん、座りすぎをやめるのは、実際どの程度座って過ごしているのかを知る必要があり、合わせて1日の行動パターンも知っておかなくてはなりません。

そして、あるデーターによれば、起きている時間の行動は、速足歩行やジョギングなどの中高強度身体活動が5%、ゆっくりとした散歩や料理や部屋の掃除などの低強度身体活動が35%~40%、テレビを見たりデスクワークや食事、さらに車の運転などの座位行動が55%~60%を占めているという結果となっています。

この結果からすれば、人は起きている時間のうち約3分の2を座って過ごしていることになり、そういった生活が長く続けば、悪影響が出てもおかしくないのではと思います。

さらに、オーストラリアで行われた22万人を3年にわたり追跡するという検証でも、似たような結果が出ています。この検証では、座位時間を4時間未満・4~8時間・8~11時間・11時間以上と分け、座位時間が11時間以上にも及ぶと4時間未満に比べて死亡リスクが4割高まるという結果となりました。

また、ある研究では対象を25歳以上の成人男女とし、テレビを見ている時間と死亡リスクについての調査が行われました。その調査では、テレビの視聴時間を1日2時間未満・2~4時間・4時間以上と分け、一段階上がるごとに死亡リスクが高まっていくという結果が出ています。

テレビを視聴する時は誰でも座った状態になるため、テレビを視聴する時間が長いほど座って過ごす時間が長くなってしまいます。
そして、心臓疾患や肥満、糖尿病やメタボリックシンドローム、さらにがんの発症率も高くなる可能性があります。

3) 座りすぎによって起こる症状や疾患

エコノミークラス症候群という言葉をご存じだと思いますが、主に長い時間飛行機に乗って座った状態が続くことで下半身の血流が悪くなり血栓ができてしまう疾患です。足にできた血栓がそのまま死亡の原因になることは少ないようですが、立ち上がった時に血栓がはがれて肺に達することがあり、肺の血管が詰まって肺塞栓症が起これば胸の痛みや呼吸困難などを引き起こし、命に関わることもないとは言えません。

また、災害時に車の中で避難生活を続けたためにエコノミークラス症候群になり、救急搬送されたというニュースもありました。車の中ではないとしても、避難生活は生活スペースが限られるために、身体を自由に動かすことができずにエコノミークラス症候群になる危険があります。さらに長距離運転をする職業の方、長い時間デスクワークをする人なども注意が必要であり、テレビを見る時間が長い方もエコノミークラス症候群に似た症状に陥る可能性があるでしょう。

このエコノミークラス症候群とテレビ視聴時間との関係は、大阪大学の研究チームによって報告されています。この研究の対象は40歳から79歳の男女86,000人であり、1日の平均テレビ視聴時間を調査し死亡状況などと比較することで、1日のテレビ視聴時間が5時間を超えると、2時間半未満の人の2.5倍の比率でエコノミークラス症候群のリスクが高まると報告されています。そういったリスクを少しでも少なくするには、座りすぎずに立ち上がって動くこと、そして足をマッサージしたりこまめに水分を摂取して血栓を作らないことでしょう。

さらに、実際に働く現場を見ても、座った状態で仕事をされている人の方が病気になりやすいという研究があります。その一つがイギリスで行われた調査で、1953年に医学専門誌「ランセット」に掲載されたJ・N・モリス博士の論文です。この調査は、ロンドンの2階建てバスの運転手と車掌の心血管疾患の発症率を調べたもので、車掌の発症率が運転手の2分の1という結果が出たそうです。

その原因として、バスの中での運転手と車掌の動きが関係していると思われ、2階建てバスの車掌は1階と2階を行き来するために相当の運動量をこなす一方、運転手は座り続けているわけです。最近の調査でも、車での移動で週に10時間以上座る人は、週4時間未満の人と比べて心血管疾患によって亡くなるリスクが82%高くなるという結果が出ています。

4) 体内にどんな変化が起こっているのか

では、エコノミークラス症候群はどのようにして起こるのでしょうか。座り続けていると下半身の血流が悪くなり、血流が悪くなることで血栓ができてしまうわけですが、座ったままではふくらはぎや太ももの筋肉はほとんど使うことがありません。そして筋肉は使わなければ筋力が衰え、血流や代謝が悪くなってしまい、下半身の静脈の血液を上半身に戻す機能も鈍くなってしまいます。

そして血液がスムーズに流れないために、血栓ができてしまうわけです。和式トイレに長く入っていたり、長い時間正座をして血流が悪くなっただけでも足がしびることがありますが、それ以上の状況が続けば、足のしびれでは済まないことになり、エコノミークラス症候群になる可能性が高くなるわけです。さらに、2時間座り続けたあとは血糖値が上昇したり、血圧が上がったり、認知機能も低下すると言われています。

もちろん、座りすぎによるリスクは首や肩のコリとなって現れることもあり、長い時間のデスクワークの後に背骨を伸ばした時の痛みからも、大きな負担がかかっていたことがわかるはずです。座りすぎは、血流を悪化させ、代謝機能を低下させ、腰や肩や首に負担をかけ、老化を加速させてしまいます。

参考文献:「長生きしたければ座りすぎをやめなさい」早稲田大学教授 岡 浩一朗 著

第2章 生活習慣改造の取り組み >

参考文献著者紹介


早稲田大学教授 岡浩一朗氏
早稲田大学スポーツ科学研究科
岡 浩一朗 研究室

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