寿命を縮める座りすぎの生活-5-

第5章 座りすぎない生活習慣作り

1) 家庭生活での座りすぎ対策

仕事中だけでなく家庭生活でも座りすぎないように動くことが大切です。そのためには、まず自分が座りすぎていることを意識してもらわなければなりません。

オーストラリアで行われた研究によると、座ることのメリット・デメリットを高齢者に伝え、座らずに楽しめる趣味を持つという働きかけをしたところ、平均して1日に30分ほど座っている時間が少なくなったという結果が出たそうです。家庭では、一般的に女性の方が男性よりも立って動いているのではないでしょうか。

家事や育児はもちろんですが、かなりこまごまとした雑事で動いています。男性は座ったままで、お茶を飲み新聞を広げ、食事にしても入浴にしても女性が準備するのを待つだけかもしれません。その差が、男性よりも女性の平均寿命を長くしているのかもしれません。それでも近年は、食後の洗い物やゴミ出しなど男性も家事に参加する機会が増えたようで、健康にとっては良いことではないでしょうか。

もちろん女性の場合も、誰もが座りすぎの心配がないわけではありません。子供がいる専業主婦であっても、子供が遊んでいるそばでベンチに座っていることもあるでしょうし、椅子に座って料理をする方もいるでしょう。1人暮らしで働いていても仕事はデスクワークで、家ではゲームをするために長い時間座って過ごしているかもしれません。逆に子育て中であれば、小さなお子さんを追いかけて座る暇もなく家の中を動き回っているかもしれません。つまり、座りすぎは環境によって左右されることが多く、自らの意思で生活活動を変えるのは難しいということです。

そこで、何か1つ身体によいことを意識してはいかがでしょうか。たとえば、食事に気を使うなど1つ始めると、健康が気になりだし気を遣うようになるものです。食生活に気を配るようになると、運動不足が気になりだすでしょうし、1つ始めることが生活習慣を変えることにつながります。やりやすいこと、あるいはやってみたいことを見つけて行動を起こすことで、意識が広がり健康的なライフスタイルになるかもしれません。テレビを見ている時はCMになったら立ってお茶や水を飲む、CMの間にストレッチをするといった小さな決まり事を設けるだけで生活習慣が変わります。こまめに掃除をして、移動しなければ手が届かないところに物を置くのもいいでしょう。何も意識せずにいるとダラダラと座る時間ばかり長くなってしまいます。

もちろん、週末にジムに通って汗を流すことも悪くはありませんが、ジムで筋トレや身体を引き締める運動をするのと、日常生活の中でこまめに動くのとでは求めるものが違います。健康維持・増進のためには中高強度の身体活動を、そして座りすぎを減らして健康リスクを低くするためには低強度の身体活動が必要です。イギリスやオーストラリアでは、早くから座りすぎの解消のために身体活動の指針を打ち出し、1日30分以上毎日動くことを勧めて、座っている時間を減らそうとしています。ここ数年そういった声明や勧告を行う学会などが増えて、どうやって座りすぎを減らすかといった取り組みが行われるようになりました。

 

2) 子供の座りすぎ

近年、子供の体力低下が問題視されて、さらに体力低下と学力低下との関係も危惧されるようになりました。ただ、保護者の方に体力低下を訴えても反応は薄いのですが、学力の低下との関連性を訴えるとさすがに関心を持たれるようです。文部科学省では「体力・運動能力調査」を実施していますが、その調査から日本の子供たちの活動量が年々減少傾向にあることがわかっています。

さらに、子供の姿勢の悪さも問題になっているわけですが、それも体力不足と関係があるのでしょう。現代の子供たちの1日の歩数は1万2,000歩ほどと言われていますが、30~40年前と比べると半減しているようです。そして、歩く歩数が減ったということは座る時間が長くなっているわけです。

学校でも塾でも、そして家庭でも座って過ごし、特に家庭で座っている時間はテレビやゲーム、パソコン操作などのスクリーンタイムであり、諸外国ではこのスクリーンタイムを1日2時間以下にすることを推奨しています。ところが日本の小学5年生と中学2年生を対象にした調査では、1日2時間以上テレビ視聴やゲームを行っている子供が60%以上になるという結果が出ました。しかも、日本での子供の座りすぎに関しての研究や対策は遅れていて、子供の頃の習慣がそのまま大人になってからの習慣になってしまうことが心配されます。

将来にまで悪い生活習慣を持ち越さないためにも、子供の頃から足腰を鍛えるためにしっかり動いて座位時間を減らしていけたらと思います。

最近は1人1台のタブレットを使った授業が行われることもあり、黒板の前に出て答えを書く機会が減っていることで授業中ずっと座ったままというケースも多いのでしょう。授業のやり方を変え、教室の使い方を変えるなどの工夫をして、立って動く要素を取り入れていけば座りすぎを解消できるのではないでしょうか。ゲームも、座ってするばかりでなく、立って動くようなゲームを活用したいものです。たとえば、ポケモンGOには外を動き回るという座りすぎを解消するメリットがありました。日本では、欧米のように子供の肥満はまだそれほど問題視されていないようですが、健康リスクを考えると今のうちに活動量を増やす工夫をしていただきたいと思います。

 

3) 高齢者の座りすぎ

以前、高齢者の方たちの座りすぎの調査を行ったことがあります。腰に加速度計を付けていただき、その活動量を調べることでどの程度座ったまま過ごしているかということを調査したわけですが、中には1日の90%を座って過ごしている方もいました。座りすぎは、座りすぎに気付くことである程度は解消できるという例もありますので、加速度計を付けることで座りすぎないように意識することができます。

オーストラリアで行われた研究でも、加速度計を付けて自分の座っている時間を数値で知ってもらい、座らずにできる趣味や過ごし方をアドバイスするなどして普段の生活の行動に反映させ、60人ほどが1日平均3%ほど座りすぎを解消できたそうです。

高齢者は、起きている時間のうち60~70%は座って過ごしていると言われています。一部の高齢者の方は定年退職後に地域の活動に参加して、活躍の場を見つけることで動き回る機会を持てるのでしょうが、多くの場合は家の中でボーっと過ごすことが多く、そのため座りすぎとなってしまい総死亡リスクが高くなってしまいます。また、筋肉量の低下や運動器の機能低下も起こりやすくなり、介護の必要性も高くなることでしょう。

足腰が弱くなればできるだけ座っていたいと思うでしょうが、元気でいるためには電車の中でも座らずに揺られて体幹を鍛えるほうが健康にはいいのではないでしょうか。そして、座っている時間をトータルで考えるだけでなく、連続して座らない、1時間にどれくらい立って動いたか、といったことを意識することで老化を遅らせていただければと思います。要介護にならないためには足腰が丈夫であること、そして認知機能の低下を防ぐことが重要で、特に歩行速度を今のまま維持できるかどうかにかかっているとも言えます。歩行速度は元気で長生きできるかどうかの目安になると言われ、長い時間の座りっぱなしは足腰が弱り歩行速度に影響してしまいます。

最後に、座りすぎを減らすためには地域ぐるみの工夫も必要ではないでしょうか。たとえば、地域の美術館巡りや高齢者の野球観戦といった福祉や介護医療とはまったく別の分野とコラボした取り組みはいかがでしょうか。もちろん、犬の散歩もいいでしょうし、映画の撮影所巡りやアニメの舞台巡りの旅など、目的は健康増進でなくても結果的に身体にいい身体活動になるはずです。そして、何より座りすぎてはいけないという意識をもって生活していただきたいものです。

 

参考文献:『「座りすぎ」が寿命を縮める』早稲田大学教授 岡 浩一朗 著

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参考文献著者紹介


早稲田大学教授 岡浩一朗氏
早稲田大学スポーツ科学研究科
岡 浩一朗 研究室

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