寿命を縮める座りすぎの生活-4-

第4章 座りすぎない職場環境作り

1) 仕事中の座りすぎないための工夫

多くの人が座った状態で何時間も仕事をしているわけですが、ある研究によると日本の就労者の4人のうち3人がデスクワークを行っていると考えられ、起きている時間の60%以上が椅子に座ってパソコンなどに向き合っている時間ということになります。
しかも、30分以上継続して座り続けていることも多く、座りすぎを解消するには、まずは仕事中の座りすぎを解消しなければなりません。

そこで、最近注目されているのが、スタンディングデスクや既存のデスクに取り付けるワークステーションの活用で、新しいオフィス器具を導入することで環境を変えようとする試みですが、ある会社ではシットスタンド・ワークステーションの導入後の座位時間が導入前に比べて2時間ほど減ったという報告もあります。

また、あるデーターによると、シットスタンド・ワークステーションを1ヶ月試したところ、仕事中の座位時間が1時間減っただけでなく、腰や首の痛みが改善して疲労感が緩和されたそうです。こういった企業が徐々に増えているようですが、それでも多くの企業では特別に座りすぎ対策をとることはなく、従業員自らが意識して立って動くようにしたいものです。

座り続けて作業することが身体によくないとわかれば、30分に1度、あるいは1時間に1度、立って動いてみようと思うのではないでしょうか。その場でできる軽い運動や筋力トレーニングをするだけで、血糖値が改善したという報告もあります。

また、座ったままできる運動として、つま先を上げたり膝を延ばしたり、首だけ曲げたり両手を組んで頭上に引き上げるといった動きも座りすぎを解消する運動になると思います。

おそらく座りすぎを意識しない人は2時間でも3時間でも座り続けることができてしまうようですが、普段から座りすぎを意識して時々立って動くのが当たり前になると座り続けることに違和感を覚え、1時間座ったままでいると筋肉がそろそろ立ちたいと訴えるようになります。

たとえば電話をする時は意識して立ってみてはいかがでしょうか。報告や連絡は相手の席まで歩き、遠回してドアやコピー機まで行き、ランチは外に行って食べるのも座りすぎの解消になると思います。

これまでの研究では、20~30分に1回のブレイクが効果的だという結果が出ていますが、現実には20~30分に1回のブレイクのために仕事を中断するのは難しい人も多いでしょう。ただ、誰もが可能なタイミングとして最低でも1時間に1回はブレイクを設けていただきたいと思います。そのブレイクを実行するために、アップルウォッチのようなデバイスを活用するという方法もあります。

立ち上がることを促すメッセージとともに振動が起こり、1時間に1回立ったかどうか、そして消費したエネルギーや歩いた歩数などを知らせてくれます。こういった座りすぎていないかどうかの確認のためのツールを有効に活用してみてはいかがでしょうか。

 

2) 座りすぎ解消を目指した企業の取り組み

個人の意識も重要ですが、職場の環境改善や社員に対して座りすぎの健康リスクを周知することも必要でしょう。実は、立って仕事をすることをお勧めしても、職場が受け入れるような環境ではないケースが多いようです。

確かに、急に環境を変えることは難しいかもしれませんが、オフィス器具の買い替え時などに座りすぎない環境作りを提案していただければと思います。

2015年には座りすぎの研究者たちによる議論の結果、1日8時間労働のうち2時間くらいは立って動くこと、そして企業はスタンディングデスクやシットスタンド・ワークステーションの導入を進めるといったメッセージをイギリスのスポーツ医学会誌で発表しています。

そして、座りすぎ改善を図ろうとしている企業の1つが楽天です。楽天は本社移転の際にスタンディングデスクを導入し、立ったまま仕事ができる環境を整えてきました。ただ、システムエンジニアの方たちは座りすぎに対して敏感になっているようですが、事務系の社員の方の場合はまだまだ座りすぎの方が多く、座りすぎによる身体への悪影響についてもっと知ってもらう必要がありそうです。

では、立って仕事ができるような環境に変わったことで、社員の意識や行動はどのように変化していくのでしょうか。実際にスタンディングデスクを導入した企業の25人の社員の方たちに対して、2ヶ月~半年間の間にインタビューを行い、新しいツールを実際に使っていけるかというフィジビリティや、新しい環境を受け入れて行動に生かしていけるかといったアクセプタビリティについて調査しています。

その結果、腰痛や肩こりが減ったという声が聞かれました。また、周囲のメンバーとの会話が増えて、立っているとすぐに動くことができるため打ち合わせの機会も増えたようです。座りすぎが仕事への意欲の低下の原因にもなっていることは多くの企業が問題視していることですが、インタビューからは、立って動く時間を取り入れることがやる気や集中力の低下の解消になることもわかりました。

ただ、スタンディングデスクの使用時間は人によって差があり、1日5時間以上使う人もいれば、週に数回といった方もいたようです。また、立ちたくなるきっかけもさまざまで、集中したい時や気分を切り替えたい時、あるいは業務の内容を変える時に立つという方もいるようです。

こういった声から考えられることは、立って仕事をすることを受け入れられるかどうかは気分転換や仕事のメリハリ、身体の負担の軽減や生産性の向上などが実感できるかどうかによるのかもしれません。日本人は周囲に合わせようとする意識が強く、周りに座って作業している人が多ければ、なかなか立って作業しにくいものです。

そのほかにも、立って作業しようとした時に椅子が邪魔になることもあり、キーボードが高くなりすぎるといったスタンディングデスクの使い勝手の悪さが、立って作業することのネックになっているケースもありました。そして、作業に必要な周辺機器や道具、椅子やワークスペースなど、今後の課題も見えてきたわけです。

 

3) 仕事の生産性と環境整備

健康のために身体を動かすことは大切ですが、たとえ身体を動かすことを意識したとしても、それ以外の時間に長く座っていたのでは元も子もありません。

食事や生活習慣が体調不良に関わるのと同じように、座りすぎで体調不良が起こることも考えていただきたいと思います。腰痛や肩こりが起こらないような構造の椅子を利用するのもいいのでしょうが、椅子に座らないで立って作業することを意識していただきたいと思います。

ところが、立って作業するにはクリアしなければならない問題もあります。

たとえば、ハイヒールを履いて立ったまま作業すると足が痛くなるといった声が聞かれますが、立ち心地のいいマットを敷いてみてはいかがでしょうか。

あるいは、上司や幹部が率先して立って作業をすれば、社員も立ちやすくなるはずです。会議やミーティングを立ったまま行うのもいいかもしれません。環境の整備・啓蒙活動・組織による取り組みが必要であり、この3つが揃ってようやく会社における座りすぎ解消が実現できるのではないでしょうか。

そして、立って作業するためのオフィス用品の開発を行っている企業もあります。その1つが、医療現場など職場の環境やニーズに合わせて、立って操作ができる機器を開発するエルゴトロン社です。また、株式会社岡村製作所でも立ったまま作業できるデスクの開発を行っています。

多くの企業が生産性の上がるオフィスの環境整備に関心をお持ちだと思いますので、さまざまな分野で座りすぎを解消するためのアイデアを出し合うことができれば思います。そして、働けば働くほど元気で健康になるオフィスを目指して、働き手1人1人が座りすぎという意識を高め、ハード面とソフト面の環境を整え、社内のルール作りを行っていただければと思います。そして、そういった仕事のスタイルが私生活にも反映されれば、座りっぱなしの生活も改善できると思います。

 

参考文献:『「座りすぎ」が寿命を縮める』早稲田大学教授 岡 浩一朗 著

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参考文献著者紹介


早稲田大学教授 岡浩一朗氏
早稲田大学スポーツ科学研究科
岡 浩一朗 研究室

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