寿命を縮める座りすぎの生活-1-

第1章 現代人の座りすぎを考える

1) 1日何時間座っているのか

座りすぎが寿命を短くしていると聞けば驚く方も多いのでしょうが、まさか自分が座りすぎているとは思っていないことでしょう。

ところが、ほとんどの日本人は座りすぎていることが、最近の研究でわかってきました。そして、日本人の座っている時間は、世界20ヶ国のデータと比較したところ、最も座っている時間が長いことも確認できました。しかも、座りすぎの生活を送っていると、そうでない人たちと比べて病気になりやすいという報告もあります。

その病気には心血管疾患や糖尿病、一部のがんといったリスクも高める可能性があり、オーストラリア、イタリア、アメリカなどでは座りすぎの健康への悪影響についての研究が盛んにおこなわれています。ただ、1日どのくらい座っていると座りすぎになるのかを判断するには、まず座りすぎとはどういった状態を示すのか知る必要があるでしょう。

座りすぎの研究において座っている姿勢を座位行動と呼んでいますが、具体的には睡眠以外の時間の中で、エネルギー消費量が1.5メッツ以下の座っている状態や寝転んでいる状態を指しています。

このメッツとは身体活動の強さを表す単位であり、座って安静にしている状態を1メッツとし、静かにテレビを見たり音楽を聴いたりする活動が当てはまります。

また、座って本や新聞を読んでいる状態を1.3メッツ、車の運転や軽いオフィスワーク、パソコン操作や座って入浴している状態が1.5メッツです。つまり、車の運転やパソコン操作さえエネルギー消費量が1.5メッツに当てはまり、座位行動に該当することになります。そして、健康に良いとされる身体活動は3メッツ以上と言われていますが、料理や洗濯、アイロンがけや店舗での立ち仕事はせいぜい2メッツ・2.3メッツ程度の活動であり、ストレッチやヨガ、キャッチボールやベビーカーを押すといった活動も3メッツには届かずに低強度の身体活動とされます。

では、3メッツ以上の身体活動とはどういった動きが含まれるのでしょうか。たとえば、1分間に平地を67m歩いたり、犬を連れて歩いたり買い物をするなどの行動でようやく3メッツ程度の身体活動をしていることになります。

それ以上の身体活動は中高強度の身体活動と呼べるわけですが、モップかけや掃除機を使った掃除、風呂掃除や庭の草むしり、家具の移動といった活動は3メッツから少しずつ活動の強度が上がり、農作業や階段を上って荷物を運ぶといった動きであれば9メッツに該当することになります。

また、歩行運動にしても平地を1分間に95~100m歩けば4.0メッツ、1分間に107mの速歩きであれば5.0メッツとなります。そんな身体活動の例に照らし合わせてみると、1日の活動の多くが低強度の身体活動や座位行動に当てはまることに気付く方も多いのではないでしょうか。

2) 職場での座りすぎ

実は、ある調査に基づいてわかったことがあります。それは、現代人の多くが起きている時間のうち55~60%を座位行動で過ごしているということです。

さらに3メッツ未満の低強度の身体活動が40%弱、中高強度の身体活動はわずか5%程度にとどまるという結果が出ています。ご自身では家事や仕事で動き回っているように思っていても、そのほとんどが低強度の身体活動、あるいはエネルギー消費量の少ない座ったままで過ごす時間となっているわけです。

もちろん、何時間座っていると座りすぎになるのかは、座っている時間以外にどんな動きをしているかによっても違いがあります。おもに会社でデスクワークを行っている方であれば、平均して8時間程度は座って作業しているでしょうから、それ以上であれば座りすぎと言えるかもしれません。

もちろん、座らざるを得ない状況や事情もあるでしょう。会社に行けば座って仕事をするのが当たり前であり、車を運転する業務の方は座りっぱなしになることが多くなります。つまり、働く環境が座りすぎを生み出しているのかもしれません。

そこで、20年前の仕事場を思い出してください。おそらくオフィスには今以上の動きがあったはずです。メールでの処理ではなく担当部署や上司のところへ行き決済の承認を得て、資料をコピーするために動くこともあったはずです。今は打ち合わせのために他の人の机まで歩かなくても、スマホやパソコンでやり取りすることができます。

そういったことを考えると、ほとんど動かずに事が足りてしまいます。そして、40年前の日本人の労働時間と比較すると、1日の仕事時間は増えて1日10時間以上働く人の割合も増えています。

さらに、デスクワークが増えることで仕事をする時間が長くなったとしても、エネルギー消費が増えるわけではなく1.5メッツ以下の座位行動の時間が増えてしまうことになります。おそらく、以前よりも座っている時間が長くなっていることと感じる方もいるのではないでしょうか。

3) 家の中での座りすぎ

座りすぎは仕事場だけでなく、家の中でも座りすぎになっているのではないでしょうか?

その例が、テレビです。数十年前、テレビはリモコン式ではないためチャンネルを変えるためにテレビまで近づく必要があり、そのたびに立ち上がっていました。洗濯機は二層式で、洗濯の後の濯ぎそして脱水と洗濯物を移さなければならないので、立ち上がって操作しに行ったものです。今のように全自動で済むわけではなく、運動量にはかなりの差があるでしょう。

固定電話に電話がかかるたびに立ち上がって、電話機のある場所まで歩いて行かなければなりません。その他にも、便利になった家電や道具のおかげで座ったままで済ませられることが多くなりました。

そういった状況を示すイギリスのデータがあります。それは、1960年代からの身体活動のデータであり、未来の予想でもあります。たとえば、1960年代のイギリスの人々は仕事・家事・移動・余暇のどれをとっても活動量が高く、良く身体を動かす生活を送っていたことがわかります。

ところが次第に活動量は減り、逆に座位時間が増え、特に2000年を過ぎた頃からその傾向が顕著になってきたようです。特に、もっとも変化の大きいのが仕事での身体活動で、身体を動かす仕事がどんどん減っていることがわかります。おそらくその傾向はさらに拍車がかかり、将来はさらに身体を動かす仕事が減っていくでしょう。そして、その傾向はイギリスに限ったことではなく、先進国すべてに共通していると言えるでしょう。

さらに、仕事での身体活動量が減るだけでなく、家の中での活動量も減ってしまうとなれば、身体への影響が出てもおかしくありません。たとえば、テレビの見すぎが原因で肥満になることがあります。テレビを見ている時間はそのまま座っている時間になるわけですが、テレビを何時間見ていたかで座っている時間がどの程度なのかがわかるでしょう。

実は、イギリスではテレビについての調査が行われたこともあります。イギリスはケーブルテレビの普及もあって、テレビでスポーツ観戦をする人たちも多いようです。そして、テレビによるスポーツ観戦と肥満とが深く関わっているということがわかりました。スタジアムに足を運びスポーツ観戦すればある程度の活動量は得られるのでしょうが、テレビによるスポーツ観戦は身体をほとんど動かさずに済み、テレビでスポーツ観戦しながらスナック菓子を食べたり清涼飲料水を飲んだりすることで肥満を招いてしまうのかもしれません。

身体をあまり動かさずに仕事や家事を済ませ、テレビでスポーツ観戦できるとなれば快適な生活を送っているように思ってしまいますが、その快適さが健康に悪影響を及ぼすこともあります。

こんな風刺があります。現代はテレビが薄くなって人が太った時代になったというものですが、太るだけでなく心血管疾患や糖尿病などの健康リスクが潜んでいることになります。また、テレビの視聴に加えてパソコンの利用時間も増えています。もちろん、テレビと違ってパソコンは認知機能が伴う行動でもあり、健康への影響は違いがあるのかもしれませんが座りすぎが増すのは確かでしょう。

 

 

参考文献:『「座りすぎ」が寿命を縮める』早稲田大学教授 岡 浩一朗 著

第2章 座りすぎがいけない理由 >

参考文献著者紹介


早稲田大学教授 岡浩一朗氏
早稲田大学スポーツ科学研究科
岡 浩一朗 研究室

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